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腸内からのアンチエイジング 加齢による腸疾患抑制にも期待

 乳酸菌といえば、これまで「腸に住む善玉菌を増やし、悪玉菌を減らして腸内環境を整える。」という働きに注目が集まっていた。しかし最新の研究では、或る乳酸菌に「腸がもつ“バリア機能”に働きかける」可能性があり、加齢に伴う腸の機能低下や疾患を抑制することが判ってきた。

 今回の研究結果は、「乳酸菌のアンチエイジング効果」をテーマとした、仏パスツール研究所と明治の共同研究で、2014/3月20日に開催されたセミナーで発表された。

・明治・食機能科学研究所の浅見幸夫さんを中心とするチームが、腸の老化の抑制メカニズムを検証した。
・順天堂大学医学部・小林弘幸教授による基調講演において、腸の健康と全身の健康との関わりについて、“便秘”を例に解説した。

 詳しくは、下記をご覧ください。

腸内からのアンチエイジング 加齢による腸疾患抑制にも期待
  Newsポストセブン >  ライフ  2014/04/04  


 乳酸菌といえば、これまで「腸に住む善玉菌を増やし、悪玉菌を減らして腸内環境を整える。」という働きに注目が集まっていた。しかし最新の研究では、或る乳酸菌に「腸がもつ“バリア機能”に働きかける」可能性があり、加齢に伴う腸の機能低下や疾患を抑制することが判ってきた。

 その乳酸菌が『LB81乳酸菌』で、ブルガリアで昔からヨーグルトを作る際に使われてきた乳酸菌『ブルガリア菌2038株』と、ヨーグルトによく使用される『サーモフィラス菌1131株』を合わせたものだという。

 今回の研究結果は、「乳酸菌のアンチエイジング効果」をテーマとした、仏パスツール研究所と明治の共同研究を通して明らかになり、3月20日に開催されたセミナーで発表された。

 ヒトの腸には、500種類もの腸内細菌が棲んでいて、その数は1兆個にも上ると云われる。腸内細菌には、ヒトに有用な「善玉菌」と有害な「悪玉菌」、優勢な方の味方につく「日和見菌」がいて、腸内細菌叢(腸内フローラ)を形成している。

 パスツール研究所のジェラール・エベール博士に依れば、「研究は、マウスを使い老化が腸にどのような影響を与えるか調べた結果、
 第1に、腸内細菌のバランスは加齢と共に変化し、悪玉菌が優勢になる傾向があること。
 第2に、加齢によって腸の“免疫システム”が正常に保たれなくなること。

が判った」という。 免疫システムの中で、明らかに変化したのが、T細胞とB細胞(いずれもリンパ球の一種)に関する値で、加齢の影響でこれらが減少すると、腸内で炎症が起こり易くなる。
 そこで研究チームは、老化したマウス(24か月齢/人間でいうと80才前後)にLB81乳酸菌を使用したヨーグルトを与えたところ、T細胞、B細胞に対する老化の影響が抑えられ、腸の炎症そのものも抑えられたことがわかった。更に、老化したマウスの腸内フローラが改善され、若いマウス(2か月齢/人間でいうと30才前後)並みのバランスに近づいていたという。

 LB81乳酸菌を摂取したマウスでは、腸の老化が改善され、又この乳酸菌を摂ることで、大腸炎など加齢に伴う腸の疾患も抑制できるという。

 明治・食機能科学研究所の浅見幸夫さんを中心とするチームが、腸の老化の抑制メカニズムを検証した。

 「腸管には『腸上皮細胞』が並んでいて、若く健康なら、この細胞から“抗菌ペプチド”という抗菌物質が正常に分泌されて“腸管バリア”を作り、細菌やウイルスなどの有害物質が腸に侵入しないよう守っているが、高齢になると、抗菌ペプチドの分泌量が減ってくるため腸管バリアが薄くなり、有害物質が腸内に侵入したり、細胞が炎症を起こしたりと、悪影響を受け易くなる。高齢のマウスにLB81乳酸菌を使用したヨーグルトを一定量(ヒトに換算すると毎日ヨーグルト100~150gに相当)摂取させたところ、抗菌ペプチドの発現量が若いマウス並みに回復し、腸に炎症を起こしたマウスでも、症状が軽くなった。」(浅見さん談)

 順天堂大学医学部・小林弘幸教授による基調講演において、腸の健康と全身の健康との関わりについて、“便秘”を例に解説した。

 「たかが便秘と思われるが、実は便秘は全身の健康を脅かす、非常に深刻な病気です。便秘になると結腸がんのリスクが上がることも判っている。海外の研究では、便秘になるとQOL(生活の質)や労働生産性が落ちるというデータも出ている。
 便には、体にとって不要な物質が含まれている。それが体内に長く留まれば、腸管から有害物質が吸収され、血液にのって全身の細胞に運ばれ、さまざまな身体の不調の原因となるから、健康を保つには、腸の健康が不可欠なのです。」

 更に“腸の老化”について、次のように述べた。

 「人間の体は、緊張したときに働く『交感神経』と、リラックス時に働く『副交感神経』がバランスよく働くことによってベストな状態に保たれている。腸は、副交感神経が優位なとき、つまりリラックスしたときに収縮して、便を送り出すのですが、この神経の働きは加齢と共に低下する。また老化に依り腸内の善玉菌が減るから、高齢になるほど便秘が増えると考えられる。」
 しかし、腸の働きが衰える原因は、老化だけではない。年齢に関わらず、その原因は、食物繊維の不足や高脂肪食といった食生活の乱れ、過労や睡眠不足などの不規則な生活、さまざまなストレスによって、腸がうまく働かないという人も多い。

 今回の「乳酸菌のアンチエイジング効果」の研究成果について、小林教授の評価は、

 「腸に対して避け難いダメージ要因を抱える現代人にとって、『乳酸菌に腸の炎症を抑制できる可能性が有る。』と判ったことは、健康長寿を目指す上で非常に有意義なことで、腸が若々しく、正常に働けば栄養をしっかり吸収できて、全身が健康になる。また、自律神経のバランスも整うため、心の健康を保つことにも繋がる。今後はこの乳酸菌の新たな作用が解明されることに期待している。」
  2014/05/14   蔭地
タグ:健康 , 乳酸菌