健康と腸内細菌について

 乳酸菌の健康への寄与について「プロバイオティクス」という言葉で近年表わされるようになり、各社から色々な種類のヨーグルトが発売され、お近くのスーパーでも沢山見かけるようになっていますから、乳酸菌を含むヨーグルトが健康に良いことの理解は深まっていると思います。そう云った中で、もう一度「健康と腸内細菌について」 おさらいをしておこうと思います。


健康と腸内細菌について

 日本は世界有数の長寿国になり、寝たきり老人認知症患者増大、更に年々大幅に増える医療費などが大きな社会問題となっており、社会保障と税の一体改革」が迫られています。
 こうした国民生活に痛みを伴う厳しい情勢の中で、私たちは『自分の健康は自分で守る』という意識をこれまで以上に持つべき時代となっています。
 そこで、人間と共生(共棲)し、老化と生活習慣病の予防に関わりが深いと云われる「健康と腸内細菌」について纏めてみました。 今後益々長寿化する社会における、ご自身の健康対策のためにお役立て頂き、生活習慣病等の予防に結びつくことを願っています。

 「腸内細菌」とは、私たちの腸の中に棲んでいる肉眼では見えない微生物つまり細菌のことですが、健康づくりの視点から近年関心が高まっていて、この腸内細菌に目を向けた善玉菌を優勢にするプロバイをティクス健康法が注目されるようになっています。  

ヒトの腸内には1~1.5kgもの腸内細菌が住んでいる

 私たちが無菌状態でいられるのは母親の胎内にいる時だけで、生まれ出た瞬間から細菌の洗礼を受けて、腸の中に棲みつく沢山の細菌と共生していくことになります。
 生まれ出た赤ちゃんの一日後の便には既に1000億個という数の細菌が含まれ、そこには大腸菌などが多いのですが、生後一週間位で乳酸菌の一種のビフィズス菌が腸内細菌のほとんどを占めると云われています。赤ちゃんの便の色は黄色くて乳酸菌の甘酸っぱい匂いがします。そして離乳期から大人と同じような食べ物を摂るようになると、腸内細菌の種類や数が増えていきます。成人一人でその細菌は約100種類、100~300兆個、重さに換算すると実に1~1.5kgにのぼると云われています。

 例えば食塩や砂糖の1kg入り袋の重さから連想して「私の腸の中にそんなに沢山の細菌がいるの?」と驚かれることでしょう。かつてヤクルト本社の新聞広告に『あなたの体重1kgが、あなたの腸内細菌の重さです。』というキャッチコピーが掲載されたことがありました。

善玉菌:悪玉菌:日和見菌=20:10:70 が、理想のバランス

 私たちが健康について考える時、この腸内細菌の存在が大きなポイントになります。腸内で絶え間なく増殖を繰り返して勢力争いをしている細菌群のバランス腸内フローラ)が健康のカギを握り、老化や生活習慣病と密接な関わりがあることが明らかになってきました。腸内に棲む細菌群(腸内細菌)は、乳酸菌などの善玉菌(有用菌)、ウェルシュ菌などの悪玉菌(有害菌・腐敗菌)、善玉にも悪玉にも属さない中間菌(日和見菌)に大別されます。

 これら三種類の細菌の割合は、一般的には善玉菌20%悪玉菌10%中間菌70%バランスの取れた状態と云われています。中間菌は、状況に応じて善玉菌に加勢したり、悪玉菌の活動に加担したりするので日和見菌とも呼ばれています。 腸内環境はあたかも善人や悪人がいる人間社会とよく似ているようにも感じられます。 善玉菌がいつも勢いよく活動していることが望ましいのは、言うまでもないことです。

 善玉菌の代表格は乳酸菌で、消化吸収を助けたり、栄養、ビタミンの体内合成や免疫(ヒトの自己防衛力)を高め、更に腸内で悪玉菌が増えるのを抑えるなど、体にとって良い働きをする有用菌と呼ばれる所以です。
 一方、ウェルシュ菌に代表される悪玉菌は、腸内のタンパク質やアミノ酸を腐敗させて様々な有害物質(毒素である腐敗産物)を作り、有害菌・腐敗菌とも呼ばれる所以です。

 ヒトは若く健康でいる時は、腸内環境が『善玉菌優勢。悪玉菌劣勢』な腸内細菌の好バランス状態にありますが、加齢に依り中高年になってくると次第にその腸内環境のバランスに変化が起き、善玉菌が減ると共に悪玉菌が増え『悪玉菌優勢。善玉菌劣勢』へと進んでいきます。その傾向は加齢の進行と共に一層顕著になります。 またストレスなどにより、そのバランスは容易に変化すると云われ、がん治療に使われる抗がん剤等の抗生物質の使用下では、病原菌だけでなく善玉菌も死滅する為に、免疫力も大幅に低下します。

健康の基本条件: 適切な食生活+適度な運動+過度なストレスの解消

 悪玉菌の増加は、色々な毒素の産生につながり、体内に残留するこれらの毒素が老化促進物質、生活習慣病起因物質として老いや多くの病気との関わりを持ってきます。癌をはじめ高血圧などの血管障害、肝機能障害、胃腸障害などを引き起こす要因の一つだと最近の研究結果が示しています。また、免疫力が低下すると、風邪・肺炎・入院中の細菌感染などの感染症に罹り易くなることが懸念されます。
 健康な体を維持する為には、適切な食生活適度の運動過度なストレスの解消三大基本です。 でも、この基本的な事を実践するのは、容易いことではありません。

老化は、腸から始まっている・・・・・排泄便を日々観察する習慣を

 「人は足から老いる」とよく云われますが、「人は腸から老いる」ということもご存じでしょうか?
 腸(主に小腸と大腸)は、食べたものを消化し、栄養分を吸収して、老廃物を排泄するという役割が有ります。と同時に、食べたもの等と一緒に入り込んできた細菌やウィルス、食品添加物のような化学物質を、腸内で無害化したり、体外に排出することも、大きな役割の一つです。
 このような作用の一部を担っているのが腸管免疫で、腸が健康でないと、全身の病気につながり老化も進み易いわけです。

 乳酸菌やウェルシュ菌などの細菌は、そのほとんどが1ミクロン(1/1000mm)前後で、肉眼では見ることが出来ないミクロの世界の微生物ですから、無頓着になりがちです。ちなみに石鹸には殺菌・滅菌作用が有り、毎日の入浴や手洗いなどで体の表面を意識して清潔に保っているのですが、腸内のクリーニングとなると、どうなのでしょうか?。 腸内の状態は便の色や匂いでチェックすることができます。 悪玉菌が増えると、腸の中の腐敗が進み便の色も黒ずんで悪臭を放つようになり、便秘になり易くなります。 悪臭便は、腸内からの悪いシグナルです。『便』という文字が『便り』と読めることからも、排泄便の内容を注意して読み取る必要があるのです。
 腸内に残る毒素(腐敗産物)が増えれば老化が促進され、便秘下痢も多くなります。そしてその毒素が腸から吸収される形で血液の汚れも加速しますので、健康上のトラブルを起こすのも自明の理と云えましょう。

健康つくりの条件: 腸内をクリーンな状態に維持する

 乳酸菌等の善玉菌には、腸内の悪玉菌が増えるのを抑える働きがあることを前述しました。乳酸菌は腸内で増殖する時に乳酸や酢酸などを作って腸内を弱酸性にして、弱アルカリ性を好む悪玉菌にとって棲み難い腸内環境を整えます。 乳酸菌を毎日補給し、併せて食物繊維や善玉菌の栄養素となるオリゴ糖を摂ることを習慣化することがとても大事なのです。
 乳酸菌などの善玉菌の働きが活発になれば、悪玉菌の減少につながり、毒素の産生抑制悪臭便の解消をもたらし、いわゆる便秘を改善させ、腸内を綺麗な状態に維持することは、体の中からの健康づくりに役立ちます。
 1~1.5kg にものぼる腸内細菌群に乳酸菌を補給するのですから、その菌数が多目のほうが望ましいのは云うまでもないことです。腸内を綺麗な状態に維持すること、即ち善玉菌を増やして優勢にすることは、特に高齢者の悪臭便加齢臭の改善にも役立ちます。

ヒトを植物に例えると、根は腸であり、腸は心とも関係している

 西諌早病院・東洋医学研究センター長の田中保郎医師は、「植物が成長する上で根は何よりも大切である。人間にとっての根は腸であり腸が心と関係している。」と、“考根論”を提唱しています。「若し木の葉や花が枯れたり、果実が実らなければ、葉や花に薬を与えて元気になる場合もありますが、庭師ならば必ず根を見て根腐れを起こしていないかを調べる筈。人間では水分や栄養分を吸収しているのは腸です。「人間の根とは腸なのだ。これが私の考える“考根論”」の一番のベースになる考えです。」と・・・・大いに共感し、此処にご紹介した次第です。

 美しい肌つや(美肌)と若々しい健康な体を維持するために、老化防止を実践するには、腸内細菌における善玉菌の増やし方を知って、腸の中をいつも綺麗に保つことが基本です。それが健康長寿への必要条件として、是非心掛けたいことなのです。

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